ビジネススクールでMBAを取るとは?
会社経営者や起業を目指す人に限らず、ビジネススクールやMBAという言葉を耳にしたり関心を持ったことがある人も多いと思います。
では、ビジネススクールとは具体的に何をするところで、ビジネススクールでMBAを取るとはどのようなことなのでしょうか?
経営の専門家を養成
ビジネススクールは経営大学院とも称されるとおり、ビジネスに関する学問である経営学を学ぶ教育機関です。特に、経営学の修士号であるMBA(Master of Business Administration(直訳すると「経営管理の修士号」))を取ることのできる大学院のことを指します。
高等教育機関として大学の上に置かれる大学院は、一言で言うとその道の専門家を養成する場所です。大学を卒業して「学士」を取った人が大学院へ進むと多くの場合はまず2年間の「修士」の課程に進みます。これを修了して修士号を取った人の一部がさらにより高度な専門家となるために「博士」の課程に進みます。
ビジネススクールの場合は、経営学の分野の「修士課程」を修めることを目的としています。もう少し細かく分けると、従来からある大学院の修士課程と、2003年に始まった専門職大学院制度の下で作られた専門職学位としての修士課程に分けられます。
1990年代頃から日本全国に拡大
ビジネススクールという教育機関はもともと欧米で発展しました。世界最古のビジネススクールであるハーバードビジネススクールは、今から100年以上前の1900年台初頭に初頭に創立しています。
日本では、1970年代に初めて慶応義塾大学が経営学の修士課程を創設しました。その後、日本の国内企業においてもグローバル化の中で国際的に通用し得るMBAを取れる機関への需要が高まり、現在では国内で学ぶことのできる主要なビジネススクールは約30校にまで増えました。
しかし一方で日本のMBAは欧米から20年遅れているとも言われ、国際的なMBAの認証基準を満たしているのは慶応義塾大学大学院と名古屋商科大学・大学院の2校しかありません。
国際的なMBA認証
では国際的なMBAの認証とは何でしょうか?
国際的なMBAには以下の3つの大きな認証機関があります。
Association to Advance Collegiate Schools of Business (AACSB)
もっとも広範に大学のすべての学部学科の中にあるマネジメント・会計プログラムが認証の対象。世界のトップ校約5%が認証取得に成功。団体の本部はフロリダ州タンパ、アジアの本部はシンガポール。
European Quality Improvement System (EQUIS)
大学単位や特定のプログラムのポートフォリオに対してではなく、ビジネススクールに対して与えられる認証。団体の本部はベルギーのブリュッセル。
AMBA(the Association of MBAs)
もっとも狭義の認証で、ビジネススクールにおいて実務経験を有する社会人向けのコースを含むMBA・経営修士・経営管理博士等のプログラムの評価に対して与えられる認証。世界のトップ校約2%が認証取得に成功。団体の本部はロンドン。
これら3つすべての認証を受けた教育機関・プログラムは、イギリスの大学を中心に、2016年7月現在で世界30カ国に約75あります。
しかし日本ではこうした認証はまだ広がっているとは言えません。先述のとおり、日本では慶応義塾大学大学院と名古屋商科大学がAACSBの認証を取得し、名古屋商科大学大学院のみがAMBAの認証を受けています。
日本と世界(特に欧米の国々)ではビジネス慣習が異なるとはいえ、国際的な経営学教育の点からは、日本はアジア各国を含む世界に大きく水をあけられているのが現状です。
世界のトップスクールの学費
国際的にビジネスで活躍することを目指す場合には、海外のビジネススクールで学ぶことも有力な選択肢となってきます。その際に問題となるのが高額な学費です。
ビジネススクールに限らずアメリカのトップスクールは、学部から大学院、ロースクールなどの専門職大学院まであらゆる分野の教育・研究機関で学費が高額になっています。ビジネススクールでも、平均的な修了年数である2年間の学費が1000万円を超えることが少なくありません。
これに対し、アジアなどのビジネススクールではもう少し学費が抑えられる傾向にあります。一部の企業では社費での留学が認められる場合もありますが、いずれにしても厳しい競争を勝ち抜く努力が必要となります。
MBAはキャリアアップのパスポート
アメリカを始めとする多くの多国籍企業において、MBAの取得は経営幹部や管理職になるキャリアステップにおいて重要な意味を持っています。
実務経験に加え、経営の専門的な知見を持つことがビジネスリーダーとしての一つの基準となっている中で、MBAを修めていることはグローバルな人材マーケットにおいても他の人材との差を示す有効なツールと言えます。特に、国際的な認証を受けたトップのビジネススクールでMBAを取得することは大きなアドバンテージとなり得ます。
しかしそのためには、入学審査から課程の修了まで人並み外れた努力を続けて世界のトップクラスの人材としのぎを削ることが求められるなど、様々な面で厳しい世界に身を置く覚悟が不可欠となります。