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猫好き研究者の日々雑感

「国際政治学」と「国際関係論」はどう違う?

テレビのニュースや新聞を見ていると、海外でのテロや紛争、難民の問題から国際会議や各国の選挙の話題まで、世界中の様々な出来事が毎日報道されています。

そんな世界の動きをより専門的に学ぶことできるのが、全国の大学にある「国際政治」や「国際関係」と名のつく学部や学科・コースなどです。

では、学問としての「国際政治学」と「国際関係論」はどのように違うのでしょうか?

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輸入された学問 

英語では、国際政治学は「international politics」国際関係論 は「international relations」です。アメリカの大学などでは、国際関係論は略して「IR(アイアール)」とも呼ばれます。

そして日本語では、というよりもむしろ、アメリカやイギリスで発展した「international politics」や「international relations」という学問を、日本に輸入した際に日本語にあてはめたのが「国際政治学」と「国際関係論」です。

では、それぞれどのように説明されているのでしょうか。Wikipediaではポイントとなる部分をについて次のように書かれています。

国際政治学

国民国家の概念を超えた国際社会における主権国家の政策決定、安全保障、戦争と平和などの政治を検討する学問(中略)国際政治学は政治学における一分野として考えるべきであろう(Wikipedia)

国際関係論

国際関係論は国際社会において生起するさまざまな事象についての分析を行う研究領域(中略)伝統的な政治学の領域のみならず(中略)学際的な研究分野であると言える(Wikipedia)

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研究対象の範囲の違い

要点を簡単にまとめると、以下のような感じになります。

  • 国際政治学:国家と国家の間、政府と政府の間の政治について研究する学問
  • 国際関係論:政治学+αで国際社会で起こることを研究する学問

 

分析対象の違い

「政治学」のうち、国の内側の問題を扱う"国内"政治についてではなく、国と国の関係など国の外側に向けた政治に焦点を当てるのが"国際"政治(学)です。

主権国家の一番の関心事は国と国民が生存し繁栄することと考えると、まずはいかにして国と国の間で戦争が起こらないようにして平和を保つかということが重要な課題になってきます。

国際政治では、こうした戦争と平和やそれを実現するための安全保障において何が必要かなどを、政府間で話し合うことを主な分析対象としていると言えます。

しかしながら、現在の国際社会を読み解く上で、国の政府の間で起こっていることだけを見ていては不十分です。なぜなら、国際社会には政府以外にも大きな影響力を持つ多くのアクター(主体)が存在するようになってきたからです。

国際関係論では、国家間・政府間に加えて、国際機関、多国籍企業、非政府組織(NGO)など国際社会に影響を与えるすべてのアクターの間の作用に焦点を当てます。こうした複数のアクターの中から何に焦点を当てるかなどは、国際関係論の中でどの理論から分析するかによって変わってきます。

 

学問の範囲の違い

先に述べたとおり、国際政治学は政治学という学問の中の1つです。

これに対し、国際関係論では国際政治学に加え、国際法、国際政治経済学、地域研究、社会学などの様々な分野の研究も取り入れます。これが、国際関係論が学際的と言われる所以です。国際関係論ではより幅広いアプローチで国際社会を分析することが可能になります。

こうした学問として含める範囲の違いも両者の違いの一つと言えます。ただ実際には、現代の複雑な国際社会の状況を反映して「国際政治学」と称する授業であっても政府間以外のアクター同士の関係についても扱うことが必要になっています。

 

大学での違い

アメリカなどの大学では、伝統的に国際政治学は政治学部で学び、国際関係史や外交史は歴史学部で学ぶということになります。

これに対し、日本の大学の場合は国際政治学も国際関係論も、法学部の下にある政治学科などで学ぶ学問として置かれていることが多いと思います。また、実際の授業では国際政治学と国際関係論の中身がそれほど厳密に区別されていない印象もあります。

一方で、国際関係"論"と呼ばれるように、国際政治学に対して国際関係論はまだ学問としては十分に成立していないと言われることもあります。また、国際政治学者と呼ばれる研究者がいる一方で、国際関係論学者という呼び方はあまり聞きません。この背景には、国際関係論の研究者であっても、カテゴリとしては国際政治学者に含められているということもあるのでしょう。

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国際政治学と国際関係論は多くの部分で重なっていますが、学問としてのなり立ちや分析の対象・アプローチなどは異なっています。
いずれも国際社会の動きを読み解く力を養うことができる学問なので、その中で自分の興味のある分野を追求していくためにどのような分析のアプローチが相応しいかを考えることが必要なのではないかと思います。